裏山。
あまり日の差さず 湿気を帯びた
秘密の場所めいた響きだ
昔住んでいた家の裏山の印象だろう
ミズナラやカエデ クヌギ トチなどの落葉樹林
その奥に杉林が始まり里山の森へとつながっている
タイヤの積まれた簡素な階段と入口はあるものの
押し返すように繁茂する藪で 塞がれているようにしか見えない
山菜を採りにか その道なき道を分け入っていく父が
不思議でならなかった
圧倒的な藪への非力もあるが
専らほかで遊ぶのに忙しかったため
足を踏み入れることは ほとんどなかったように思う
けれど しばらく戻ってこない父が
(時折思わぬ所から姿を現したりするのでびっくりする)
一体裏山でどうしているのか
クマのように移動する姿を想像する
「秘密」感は深まるばかりだ
夜になるとフクロウがあやしげに鳴いていた
今はその裏山も伐採され
住んでいた家も無くなり
秘密と思い出を抱えたまま
記憶の中にうすれつつ 在る