May 19, 2021


 裏山。

あまり日の差さず 湿気を帯びた

秘密の場所めいた響きだ

昔住んでいた家の裏山の印象だろう

ミズナラやカエデ クヌギ トチなどの落葉樹林

その奥に杉林が始まり里山の森へとつながっている

タイヤの積まれた簡素な階段と入口はあるものの

押し返すように繁茂する藪で 塞がれているようにしか見えない

山菜を採りにか その道なき道を分け入っていく父が

不思議でならなかった

圧倒的な藪への非力もあるが

専らほかで遊ぶのに忙しかったため

 足を踏み入れることは ほとんどなかったように思う

けれど しばらく戻ってこない父が

(時折思わぬ所から姿を現したりするのでびっくりする)

一体裏山でどうしているのか

クマのように移動する姿を想像する

「秘密」感は深まるばかりだ

夜になるとフクロウがあやしげに鳴いていた



今はその裏山も伐採され

住んでいた家も無くなり

秘密と思い出を抱えたまま

記憶の中にうすれつつ 在る