memo...
"昨日の自分に手紙をもらった"
edge effect
何が気に入ったのか
家の東壁を執拗に突くアオゲラがいた
たびたびやってきては穴を増やす
薄い板壁の穿ち具合や そこから伝う自分の音が
心地よかったのだろうか
とは言えその間絶えず
けたたましいドラミングは家中に鳴り響き
私たちを辟易させた
カカカカカ ココココココ
春の乾いた林の中から不思議な音が聞こえてきた
誰かいる 木を叩いてる
思わず耳をそばだて目をこらす
コココココ
ヒトじゃない...
背筋にひやりとしたものが下りる
知識の浅い私は遅れて ああキツツキ と気づくのだが
あまりに作為的で不可解なその音に
キツネにつままれたような思いがした
(その後アオバトやアオバズクの声にも同様の反応をする)
今も私の耳の奥で 孤独な木霊が啼いている
裏山。
あまり日の差さず 湿気を帯びた
秘密の場所めいた響きだ
昔住んでいた家の裏山の印象だろう
ミズナラやカエデ クヌギ トチなどの落葉樹林
その奥に杉林が始まり里山の森へとつながっている
タイヤの積まれた簡素な階段と入口はあるものの
押し返すように繁茂する藪で 塞がれているようにしか見えない
山菜を採りにか その道なき道を分け入っていく父が
不思議でならなかった
圧倒的な藪への非力もあるが
専らほかで遊ぶのに忙しかったため
足を踏み入れることは ほとんどなかったように思う
けれど しばらく戻ってこない父が
(時折思わぬ所から姿を現したりするのでびっくりする)
一体裏山でどうしているのか
クマのように移動する姿を想像する
「秘密」感は深まるばかりだ
夜になるとフクロウがあやしげに鳴いていた
今はその裏山も伐採され
住んでいた家も無くなり
秘密と思い出を抱えたまま
記憶の中にうすれつつ 在る