Sep 1, 2023

 






初秋の涼しい風が、空の高みから吹き降りてきた。

海の匂いがする、と思った、その瞬間、耳の奥から潮騒が響いた。

ザー。シュワシュワ。フー。

海鳴り、ならぬ耳鳴り。

三半規管の巻貝が、月の招きを受けていたのだった。


        

 「月と潮騒」 梨木香歩