数年前の初夏
実家の庭の 朽ちかけたモミの木に
次から次へとリスが群がっているのを見た
かつて 年に一度 庭から掘り起こされては
飾りをぶらさげ 星をのせ
薪ストーブの傍らで 一家のクリスマスを彩どり
それ以外 庭の片隅でひっそりと次の冬を待っていた
子供たちと同じように 年々大きく育ち
鉢へ庭への引っ越しも 一苦労どころではなくなり
しまいには量産されたポリエチレンのツリーに
持ち場を取って代わられ
しっかりと根を張る自由を得た
それでも毎年 クリスマスが近づくと
梯子をかけられ
うんと伸ばした手で星飾りだけをのせられたりもした
雪に埋もれた庭で 窓の中からときおり注ぐ
一家の視線も感じていた
常緑の枝葉は 赤茶けて枝垂れ
立ち枯れゆく彼の 最後の仕事が
何だったのかは わからない
リスたちの目的も
幹だけになった今も
トーテムポールよろしく
根を下ろしたその場所で
ただ静かに屹立している