自分の見ているものがよくわからなくとも、
もしかしたらそれ、と見当をつけつつ日々を送る。
あれはほんとうはどういうことだったんだろう、と疑念を解かずに日々を送る。
安易に諦めたり、忘れてしまったりせずに。
それは葛藤を抱えて生きるようなものだから、もやもやと苦しくもあり、力も要ることだ。
けれどその納得しないエネルギーが、
いつか時宜を得て、すべてのことを明らかにすると信じている。
―――――― 梨木 香歩『炉辺の風おと』